脚本】 童話 天使の使

2022・03・28 作

  なに!なに! なに!

  山でなにかあったのかい

  うん! うん! うん!

  年老いたキツネが

  どうしたの

  うん! うん! うん!

  へ~ そうなんだ~   

淡々とナレーター 春まだ遠い 満月の夜のこと

         谷底から 大きな叫び声が聞こえてきます。

      必死で ネズミ 「だれかー ! たすけてー !お願い! たすけてー !」

            淡々と ナ  その谷の上の松の根元で 爺ちゃんキツネと

          孫ギツネの六匹が 天使の使いの雪にくるまって

          寝ていました。 

    少し驚き そこへ あの大きな叫び声が

          聞こえてきたので 夢にうなされていた

          爺ちゃんキツネは飛び起きました。

  ビックリ  「なッ なんだ !」

      孫1「爺ちゃん・・・」

      孫2「どうしたの・・・」

      孫3「じ~ちゃん」

      孫4「爺ちゃん・・・」

      孫5「じ~ちゃん ねむ~い」

眠そうに   孫6「う~~ ねむ~い」

   淡々と  「だいじょうぶだ 寝ておれ」

   淡々と  爺ちゃんキツネは 孫を置いて 

         すぐに 谷底に走りだしました

   軽快に  「ほい ! ほい ! ほい !」

  おどろき  「あッ ! あれは 何だ !」

  少し驚く  谷の途中で急に立ち止まりました

  おどろき  「さっき見た夢とおなじじゃ」

   淡々と  谷底に 巨大な何かの足あとが

         くねくねと 山奥へと 

         続いているではありませんか!

  思いだす  「う~~ん ! あれは むかし里で見た

         魔物の足あとに に・て・いる」

   淡々と  立ち止まっていた爺ちゃんキツネに 

 少しお驚く   また 叫び声が飛び込んできたので 

         ふと われにかえり

気づくように  「おぉ ! そうだ !だれか 叫んでいたな !」


         間をおく キツネの掛け声が小さくなっていく


   淡々と  谷底に着いて 周りを見渡すと

  そわそわ   オロオロ 動き回っている野ネズミさんがいました

   強めに  「どうしたのじゃ !」

  あせって  「こッ 子どもが あの深い穴に 

          落ちたんです助けてください!」

   淡々と  キツネが穴をのぞくと 子ネズミが泣いています

  諦め気味  「う~ん 深いな~」

   淡々と  爺ちゃんキツネは考えました

考えるように  「穴に・・・ツタを入れると 子どもが つかまって

          登ってこれる・・・かもな」

   淡々と  すぐにツタを探したのですが近くにありませんでした 

  残念そう   仕方なく自慢のしっぽを入れてみましたが 

         深くてとどかない

♪ なに! なに! なに!

ネズミの子どもが落ちたって

うん! うん! うん!

じまんのしっぽも

とどかない

ふん! ふん! ふん!

へ~ そうなるの~ ♪

困ったように 爺 「いや~ こまったな~どうすればいんじゃ」

   淡々と  爺ちゃんは また 考えました

気づいたように 「あっ! そうだ!お母さん! いい方法がある」

 嬉しそうに  「えっ! いい方法が!子ども 助かりますか?」

 嬉しそうに  「ウン! きっと 助かる でも 子どもが 

          どこまで頑張れるかじゃなぁ~」

 少し元気に  「何をすればいいですか!」

 嬉しそうに  「うん~ 木の枝をの~ いっぱい穴に入れるのじゃよ」

   淡々と  それから 二匹は枝をいっぱい 拾い集めて 

         穴に 投げ入れました

  少し驚き  するとどうでしょう

 嬉しそうに  「お母さん!見ろ!みろ!子どもが枝を登ってくるぞ!」

  励ます 爺ネ 「がんばれ ! がんばれ !ゆっくり ゆっくり~」

 嬉しそうに  少し時間が かかりましたが  子ネズミは

         登ってくることができました

   おれい ネ 「キツネさん ありがとう

          わたしたちは 今 キツネさんに食べられても

    弱気で   仕方ありません でも この子が独り立ちできるまで

          まってくれませんか その時がきたら

          私を差し上げます…」

   可愛く ナ 野ネズミのお母さんは小さな手を 何度も合わせて

         キツネに お願いしました

  恐ろしく 爺 「そんなことより お母さん!この深い穴を知っているか !

          魔物が来たのじゃよ ! 魔物が !」

震えるように  「魔物に捕まったら 殺され 皮を はがされるのじゃ」

   淡々と  爺ちゃんキツネは ガタガ ふるえながらいいました

         それを見ていた野ネズミのお母さんは 小さな声で・・・

つぶやくように 「あのキツネさんが ふるえるほど恐ろしいことが

          いまこの山で起きているのね」

  あせって  「早く仲間に知らないと 大変なことになる !」

   淡々と  地面にしゃがみこみ 野ネズミさんの顔に近づいて

         おはなしをすると 大好物のネズミの臭いが

         ぷんぷんしてきます

 意気込んで  「キツネさん わたしは何をすればいいですか?」

  あせって  「うんんッ そうだな 早く仲間に知らせることじゃの~」

   淡々と ナ 年老いたキツネは よだれをふきながら思いました

恥ずかしそうに  〝これなら魔物と同じじゃ~〟と

   淡々と  キツネさんのお手伝いをすることになった 野ネズミの

         お母さんは 子どもをお家まで連れていこうとした 

    強く   そのとき !

    探し 孫1「爺ちゃ~ん!」

      孫2「爺ちゃ~~ん!」

     い 孫3「爺ちゃ~ん!」

      孫4「どこにいるの~」

     よ 孫5「爺~ちゃ~ん!」

     うに孫6「う~~ん ねむい」

驚いたように  なんと孫が 谷を降りてきたではないですか

困ったように 爺 「あッ! これは 困ったの~」

  やさしく  「お孫さんですか?」

バツ悪そうに  「うん ううん そうじゃ 起きてきおったわい」

   淡々と  谷底についた 孫ギツネが

 旨そうに 孫2 「クン! クン! うまそうな 臭いがする」

 納得した 孫4 「ほんとだ!」

呼びかける 孫1 「爺ちゃん!ネズミの においだよ!」 

臭いを嗅ぐ 孫5 「クン!クン! クン!クン!」

べたそうに孫3 「大好きな ベビーマウスの臭いだ!」

      孫6 「ねむ~い」

   淡々と  六匹の孫は 鼻をぴくぴくさせ ネズミをさがしはじめました

   怒る 爺  「こらッ! ネズミなどおらん!

          気のせいじゃよ!気のせい!」

  淡々と  爺ちゃんキツネはあせりました 

見つけた感孫1  「あッ! 見っけ!」

 旨そうに 孫4  「うまそう~」

本当に旨そう孫2  「ジューシー!」

 唾をのむ 孫5  ゴックン!」

食べようと 孫3  いただきま~」

 旨そうに 孫6 「たべた~い」

怒ってさとす   「こらッ! おまえたち!爺ちゃんと野ネズミのお母さんは

         友だちだ!そこのベビーマウッ!でなく

          その可愛い子どもも 友だちなのだ!」

 思いだす 孫1   「だって 爺ちゃん 朝 ネズミを たべッ」

   怒る 爺    「うるさ~~い!友だちは 大事にしなきゃならんのじゃ

          わかったか! わかったの!」

  

     孫1  「わかた」

     孫2  「うん…」

     孫4  そんな~」

     孫3  「エ~~~」

     孫5  「コ~ン!」

      孫6  「うそ~」

  強めに      「わかったら帰って寝るのじゃ いいな」

  淡々と  孫たちは しぶしぶ谷の上に 帰っていきました

悲しそうに ネ   「キツネさん あの子たちのお父さんと お母さんは・・・

          いらっしゃらないの」

 思いだす      「それがの~ かなり前になるのじゃが

          二匹で狩りにいったきり 帰ってこぬのじゃ」

 

悲しそうに   「それで お爺さんが 子育てしているの・・・」

悲しそうに   「うん そうだ・・・きっと 魔物に殺されたのじゃねぇかと 

         思っておるのじゃ」

  淡々と  爺ちゃんキツネは 野ネズミのお母さんの顔に

        鼻さきをつけていいました

あらためて ナ 「お母さんは よく見ると めんこい顔しているのう~」

照れながら ネ 「ああ~てれるな~ぽりぽり~」

  淡々と ナ それから 二匹は 山に入っていきました

  淡々と  爺ちゃんキツネは 雪山になれていますが

        野ネズミのお母さんに とって 山は

        とても広くて 大きな 山でした

少し勇んで ナ  それでも お母さんは 小さな勇気を ふるい立たせ 

        暗い山へ 入っていったのです

♪ そう! そう! そう!

お爺きつねは来ていった

でも! でも! でも!

ネズミの母さん

まだこない

うん! うん! うん!

へ~ たいへんだ~ ♪

間をおく

  淡々と  それから日が過ぎ 冬が終わりに近づく ある日のこと

   驚き ナ 魔物が山に現れたのです !

   強め ナ 雪に大きな足あとをつけながら 登ってくるではありませんか

 少し笑い  「キツネをみつけたら 捕まえてやる! 楽しみだな」

  淡々と  魔物が笑いながら登ってきます それを 木の陰からみていた

        爺ちゃんキツネが

小さな声で 爺 わしが何をしたというのじゃ」

  淡々と  と つぶやき 空を見上げ いのりはじめました

小声で願う  「天使さま ! 天使さまの使いの雪を 降らせてくれ!

         雪は 魔物の歩いたあとを 残してくれるからの・・・」

  淡々と  いのりおわると なんと 青空から チラチラ 

        雪が落ちてきました でも これが この冬最後の雪でした

小声で諦め 爺 「これじゃ だめじゃ この雪じゃ すぐ消えてしまう」

  落胆し  年老いた顔が うなだれ 足もとに目線を落とした その先に 

        春の使者 福寿草が つぼみを ふくらませていました

小声嬉しそう 「春になると 山は食べ物で いっぱいになる…

         それは いいのじゃがの~ 魔物もやってくるのじゃ 

         雪がなくなると 魔物の足あとも 見えなくなってしまう 

         これが こまるのじゃ~」

  淡々と  これは 見える恐怖が見えなくなった ということなのです 

        これほど 恐ろしいものは ありません

小声で説得  「わし達は 鳴声で危険を知らせあうのじゃが…

         やっぱり 一番は 雪に残された 足あとじゃ

         あの大きくて深い穴が ものすごい恐怖を与えるのじゃ」

 少し驚き  そのとき 後ろで ガサッと 何か踏む音がしました

        爺ちゃんキツネが 振り返ると孫ギツネ

        六匹が 立ち止まっていたのです

  淡々と  爺ちゃんギツネは とがった口先に 指をあてて

        小さな声でいいました

  小声で  「し~ッ! しずかに…こっちへ来い…」

  淡々と  孫ギツネは ふせなが音も立てずに

        爺ちゃんのところまできました

小声で説得 爺 「おまえたち よく見ておけ あれが 魔物だ・・・

         二本の足で歩く 魔物だ・・・」

  淡々と  孫たちは ジーッと 身動きもせず魔物を見ています

        やがて 二匹の魔物は 山奥へと入って行きました

小声で説得  「魔物に 捕まると 殺され 皮を はがされるのじゃ

         おまえたちの 父ちゃん 母ちゃんも 魔物に

         捕まったかも知れんの…

         おまえたちが まだ ちっちゃい ころじゃ~」

  淡々と  孫たちは 親の顔を 思いだそうとしましたが

        思いだせませんでした

小声で説得 爺 「よいな この山で 一番危険な 動物じゃ忘れるなよ・・・」

  小声で 孫1「爺ちゃん・・・ 魔物って……みんな・・・危険なの…」

小声で説得  「爺ちゃんも よく わからね~が 悪いほうが

         少ね~と 聞いたがの~」

 あまえて 孫5 「じいちゃ~んん」

  小声で 孫3「はじめて…見た‥」

不思議そうに孫2「爺ちゃん 魔物が手に持っていたのは 何…」

少し強めに 爺 「あれが 鉄砲じゃよ あれに撃たれたら 終わりじゃ」

 痛そうに 孫4「…痛いの~」

考えるように 「ウ~~~ン」

さむそうに 孫6「爺ちゃん・・・さむ~い」


 やさしく  「こっちさ こい」

  淡々と  雪時雨が キツネ家族に 何か訴えるかのように

        音を立てて 刺さってくる

        爺ちゃんギツネは 孫たちを春冷えから 守るために 

        木の根元で 抱きながら また 話しを続けました

  小声で 爺 「おまえたちの 父ちゃん 母ちゃんはの~ おまえたちが

         生まれてきて とっても 喜んでいたのじゃ」

  淡々と  爺ちゃんギツネは 孫の父ちゃん 母ちゃんの話しを

        泣きながら話しました

  淡々と  そんな やさしい 爺ちゃんギツネの

        あばら骨の くぼみから

        雪が とけて 流れ 落ちて いきました

♪ みろ! みろ! みろ!

春も魔物もやってきた

でも! でも! でも!

おやまに天使が

いるからさぁ

うん! うん! うん!

へ~ よかったね~ ♫

間を置く

 あまえて 孫6「爺~ちゃ~ん」

 やさしく  「う~ん… どうした…」

おしまい

悉有仏

2022・03・28

現在2022・05・04 

ロシアがウクライナに侵攻して2か月半ぐらいだ。

魔物の醜い争いの残骸を白い雪がきわだたせている。

童話「天使の使い」は、天使が山の動物たちを守るために、

真っ白な雪を使いとして地上に降らせてくれる。

雪が残す足あとで色々な事が分かってくる。

とくに、動物たちにとって、銃やワナで捕まえて毛皮を剝いだり肉を食べる、

魔物、人間の大きくて深い足あとが一番恐ろしい。

われわれは植物連鎖の頂点にいる。

その頂点にいる魔物同士が、この21世紀に戦争をはじめたら、

結末は想像の範囲を超えることなどない。

たった一人の独裁者によって引き起こされたのだ。

地球上の各国の指導者は利害関係にひたってはいられない。

首を横に振ったり、下向き加減で時の過行くのを

黙認している場合でもないのだ。

地球家のもめごとなのだから。あっち向いてはいられない。

善は、誰が見ても善であり、

悪は、どこで芽を出しても、咲く花は悪なのです。

その種子はその親に添う子なのです。

2022/03/24 北海道斜里ウトロで起きた

観光遊覧船の死亡者26人の悲惨な沈没事故も、

中途半端にも満たない単なる金儲け主義の社長の魔物に

仕組まれた怠慢事故未然に防げた驚きの惨事なのである。

ところで、爺ちゃんギツネや野ネズミのお母さんがいる山は、

いま雪も消え、早春のたたずまいであろう。

あたたかくて、食べ物にあふれ、花も咲き、緑も生えてくる季節。

なのだが、爺キツネが言っていた通り、魔物が山に入り込んでくる。

天使の使いの雪も消えてなくなり、山は初冬まで

見えない恐怖の中で生きていかなければならい。

みんな!しっかり、生きよ!!

悉有仏

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